【第59話】数字の向こうにあるもの

春のやわらかい日差しの中、
翔太と花吉は、商業施設の駐車場で誘導に立っていた。

昼下がり。車の流れも落ち着き、少しだけ余裕ができた時間。

「翔太先輩は、株しようとですか?」

花吉が、いつもの調子で話しかけてきた。

「株?ニュースで見るやつだよね…なんか難しそうな」

「最初はそうだと思います。でもね、これが意外と面白いとですよ」

花吉はスマホを取り出し、画面を見せた。

そこには、赤や青のグラフが並んでいた。

「これ、自分が持ってる会社の株。ちょっと上がっとうとですよ」

「へぇ…これって、上がったら儲かるってやつだよね?」

「そうそう。ばってん、それだけなかとです」

花吉は、少し真面目な顔になる。

「その会社が何ばしよるか、どげん成長するかを考えるとか楽しかとです」


その日の帰り道。

翔太は、ふと考えていた。

(会社の成長か…)

警備の仕事も、似ている気がした。

ただ立っているだけじゃない。
現場を見て、人の流れを読み、危険を未然に防ぐ。

「未来を読む」仕事。


翌日。

再び花吉と同じ現場。

「翔太先輩、昨日の話興味もちんしゃったですか?」

「ちょっと調べてみたけど。なんか…会社って人の集まりなんだね」

「お、よかとこに気づきんしゃった!」

花吉はうれしそうに笑った。

「株って、数字だけのうして“人”ば見るものなんですよ」

「人…なの」

「社長がどげん人か、どげな想いでやってるか。
それを信じてお金を預けるってことですけん」


その言葉に、翔太はハッとした。

(それって…警備も同じじゃないか?)

現場は、人でできている。

作業員、通行人、ドライバー。
それぞれの動きを理解し、信じて、守る。


その日の現場。

一台の車が、少し無理なタイミングで進入してきた。

翔太は一瞬で判断する。

「お待ちください!こちら優先です!」

落ち着いた声で、確実に止める。

ドライバーは一瞬戸惑ったが、すぐにブレーキを踏んだ。

危険は回避された。

「今の判断と同じ感じですたい」

隣で見ていた花吉が声をかける。

「なにが?」

「流れを見るっていうか…その先を考えるっていうか」

「株式投資も同じ」


帰り道。

翔太は空を見上げる。

(目の前の仕事だけじゃない。
その先を見る力が、大事なんだな)

スマホを取り出し、もう一度株のアプリを開いた。

まだよくわからない。
でも、確実に興味が湧いていた。


その日から。

翔太は、少しずつ「世の中の動き」に目を向けるようになった。

ニュースを見る。
会社を調べる。
そして、考える。

(この会社は、これからどうなるんだろう?)

警備員として。

そして、一人の社会人として。

翔太の視野は、少しずつ広がっていく。

「数字の向こうには、人がいる」

その気づきが、
翔太をまた一歩、成長させた。


つづく

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