【第51話】雪中四友-そこに咲く花
冬の現場。
寒波。
誰もほめてくれない仕事。
それでも立ち続ける警備員。
そこに重ねる —— 四つの花。
夜明け前の空は、墨を流したように深い藍色をしていた。
吐く息が白く、
アスファルトはうっすらと凍っている。
翔太は、無言で持ち場に立つ。
車のヘッドライトが、雪を照らす。
赤い誘導棒が、静かに弧を描く。
音は少ない。
エンジン音と、風の音だけ。
ふと、現場脇の民家の庭に目がとまった。
雪をかぶった山茶花。
まだ硬い梅のつぼみ。
派手ではない。
誰かに見せるためでもない。
それでも、咲く。
寒さの中で、
ただ、自分の時を待ちながら。
翔太は思う。
警備の仕事も、似ている。
拍手もない。
賞賛もない。
ただ、安全が守られていく。
何も起こらない一日こそが、
いちばんの成果。
東の空が、わずかに明るくなる。
雪はやみ、
空気がすこしだけ柔らぐ。
春は、まだ遠い。
けれど――
静かに咲くものは、
必ず、次の季節を知っている。
翔太は、もう一度誘導棒を握り直した。
その手は、冷たい。
だが、確かに温もりを持っていた。
つづく
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