【第11話】翔太の警備日誌|翔太、初めての後輩指導

堺市の朝、清々しい空の下。
翔太はいつものように現場へ向かう準備をしていた。

「翔太、おはよう!今日はお前に後輩がつくから、しっかり面倒みてやれよ。」
部長の二浦さんの声に、翔太は一瞬驚いた。

「えっ、僕が後輩を?」
まだ新人の気持ちが抜けない翔太は、少し不安だった。


現場に到着すると、そこには緊張した様子の若い男の子が立っていた。
「は、はじめまして!山本です!よろしくお願いします!」
彼は高校を卒業したばかりの19歳。翔太の一つ年下だった。

「よろしく、山本くん!一緒にがんばろう!」
翔太は明るく声をかけたが、内心はドキドキしていた。


初めての指導、どこまで教えればいいのか。
自分が新人の頃を思い出しながら、翔太は慎重に説明を始めた。

「まずはあいさつ!現場ではしっかり挨拶をするんだ。『おはようございます』『お疲れさまです』って。」
「それと、車を誘導するときは、歩行者と自分の身の安全を最優先にすること。」
「はい!」

山本は元気よく返事をしたが、動きはまだぎこちない。
交通誘導の基本を教えながら、翔太は少しずつ自信をつけていく。


昼休み。
山本はどこかうつむき、元気がなかった。

「どうした?」
「…実は、先輩みたいにうまくできる自信がなくて…。」

翔太は少し笑った。
「最初はみんなそうだよ。俺だって失敗ばかりだった。」
「おおきな声で、少し大げさなくらいの身振りで誘導すれば大丈夫。少しくらい失敗しても、俺がいるんだから。」

その言葉に、山本は少し顔を上げた。


午後の現場では、翔太があえて山本に先導を任せた。
「おい、山本くん!しっかり声を出して!」
「は、はい!こちら、ゆっくりお進みください!」

山本の声は最初は小さかったが、次第に大きくなり、車を誘導する動作も、しっかりしたものになっていく。
翔太はそれを見守りながら、胸の中に温かいものが広がった。

「俺も先輩になったんだな…」


夕方、現場を終えた二人は、爽やかな風の中、笑顔で帰路についた。
「翔太先輩、今日ありがとうございました!」
「こちらこそ、ありがとう。明日も一緒にがんばろう!」

翔太は、自分が少し成長したことを感じていた。

「またひとつ、明日がみえてきた。」


つづく → 第12話:初めてのトラブル対応