【第50話】ねこの日
二月二十二日。
翔太は朝、カレンダーを見て、ふっと笑った。
「今日は……ねこの日か。」
急いで制服に着替えながら、
足元を見る。
まるが、じっとこちらを見上げている。
「にゃ。」
「ごめんな、今日は仕事だ。」
まるは、くるっと背を向けて、
しっぽをふわりと揺らした。
どこか、すねているようにも見える。
いや、すねていた。
その日の現場は、
商業施設の搬入口。
「よろしくお願いします!」
いつも通りの誘導。
いつも通りの一日。
でも、ふとした瞬間に思う。
“守るって、外だけじゃないよな。”
寒い朝も、暑い日も、
まるはいつも、玄関まで見送りに来る。
帰れば、無言でそばにいる。
それは当たり前のことじゃない。
夜。
玄関のドアを開けると、
「にゃっ!」
まるが、いつもより勢いよく駆けてきた。
翔太は、かばんから小さな袋を取り出す。
「今日はな、特別だ。」
猫用のちょっといいおやつ。
まるの目が、きらりと光る。
「いつも、ありがとうな。」
そう言って頭をなでると、
まるは、喉をゴロゴロ鳴らした。
その音は、
言葉よりも、あたたかい。
翔太は思う。
守るっていうのは、
命を守ることだけじゃない。
一緒にいる時間を大切にすること。
“ありがとう”を、ちゃんと伝えること。
まるは、翔太の膝の上で丸くなる。
二月二十二日。
ねこの日。
でも翔太にとっては、
“感謝を思い出す日”だった。
つづく
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