【第43話】初詣、神社での警備

正月三が日。
まだ空気の冷たい朝、翔太はいつもより少し早く現場に到着した。

「今日は神社か……」


鳥居の向こうには、すでに参拝客の列ができはじめている。
屋台の準備をする人、家族連れ、カップル。
いつもの工事現場とは、まったく雰囲気が違った。

翔太の担当は駐車場誘導。
神社入口の警備員と無線で連携しながら、車を案内する役だ。


「こちら駐車場担当。現在、第一駐車場は残り5台です」

無線から聞こえる声に、翔太はすぐ応答する。

「了解です。こちら誘導開始します」

最初の一台目。
参拝に来た年配の夫婦の車が、ゆっくりと入ってくる。


翔太は深く一礼し、はっきりとした動作で誘導棒を振った。
正月の神社では、動きは丁寧に、表情はやわらかく。
それを事前の打ち合わせで聞いていた。

数台が続けて入り、駐車場は一気に埋まっていく。

「入口、第一駐車場満車です」

無線が入った瞬間、翔太は少し緊張した。


「了解。こちらで第二駐車場へ誘導します」

慌てず、焦らず。
誘導棒を大きく使い、ドライバーの目線を意識する。

「ありがとうございます、こちらへどうぞ」

言葉を添えるだけで、相手の表情がやわらぐのがわかる。

正午が近づくにつれ、人も車も一気に増えた。
無線はひっきりなしに鳴る。


「入口、第二も残り3台」
「了解、こちら調整します」
「入口、第一駐車場2台でました」
「了解」

翔太は、無線を聞く → 状況を判断 → 誘導
その流れを何度も繰り返した。


ふと鳥居の方を見ると、長い参拝の列。
鈴の音が風に乗って聞こえてくる。

「正月の警備って、特別だな……」

事故を起こさないことはもちろん、
気持ちよく一年を始めてもらうための警備。

そう思うと、背筋が自然と伸びた。


夕方、交代の時間。
入口担当の先輩が声をかけてくる。

「翔太、無線の使い方、落ち着いててよかったで」

「ありがとうございます。神社は、なんか緊張しますね」

先輩は少し笑って言った。

「せやろ。でもな、こういう場所守るのも、警備の仕事や」


帰り際、翔太はもう一度鳥居を振り返った。
夕焼けの中、参拝客はまだ途切れない。

「今年も、無事故でいけますように……」

翔太は小さくそう願いながら、現場をあとにした。


続く